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医療法人優なぎ会 もりもと病院 〒847-0056 佐賀県唐津市坊主町441号 TEL:0955-72-5176

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当院のrTMS治療について 当院のrTMS治療について
はじめに

2019年6月よりrTMSの保険診療が認められるようになりました。当院では2019年11月より開始し、2020年1月現在計7名の患者さんが治療を受けています。
中等度以上の難治性うつ病の患者さんが対象になります。

rTMSとはどんな治療法?

反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation : rTMS)と呼ばれる治療法です。磁気エネルギーを使って脳内の神経細胞を働かせる治療法です。この治療によって、脳本来の機能が低下している部位には興奮性の刺激を送り、過活動になっている部位に抑制性の刺激を送ることができます。うつ病により低下したり、本来の機能が不十分になっている脳の部位の調子を整える治療法です。

治療対象になる方は?

うつ病の患者さんの全てが治療対象となるわけではありません。

<対象となる条件>
(1) 18歳以上であること。
(2) 抗うつ剤を1剤以上、十分な量、十分な期間用いても、効果が認められない。
(3) 中等度以上のうつ病であること。

初めてうつ病になったけど、お薬は使いたくないという方は対象外です。薬物治療に反応しないということが条件です。また、軽症のうつ病の方も対象にはなりません。
薬物治療を続けているけど、良くならない、または薬物の副作用が出現しやすく、十分な薬物治療を受けることができない、という方が対象となります。

治療効果を知りたい

抗うつ剤を主とした薬物治療で、うつ病全体の患者さんの治療反応率は、31%程度と言われています。rTMSによる寛解率は55%程度です。薬物治療と同等以上の治療効果があると言えます。

治療を行えない方はいますか?

(1) ペースメーカー、人工内耳を入れている方
(2) 頭蓋内にインプラント、金属を入れている方
(3) けいれんを誘発する可能性がある方(てんかん、アルコール依存症など)
※身体内に金属が入っている方も、治療に用いるコイルから30cm以上離れていれば、治療は可能です。

実際の治療の流れ
診察にてrTMSの治療対象かどうか診察をします。
中等度以上のうつ病かどうかの診断は、うつ病評価尺度(HAM-D)を用います。
治療初日は、適切な刺激部位、刺激強度を決めるために計1時間30分程のお時間がかかります。この刺激部位、強度を決めることが極めて重要で、どうしてもお時間がかかります。初日の設定が、(これは私がですが)満足いかない場合は翌日も時間を取って、再度最適な部位と刺激強度を決定します。
写真の様な椅子に横たわるように座っていただきます。
刺激開始~終了まで計40分程度かかります。コイルを当て、刺激の設定などは毎回主治医が行います。
月曜日~金曜日まで週に5回で15回終了時に、うつ病評価尺度を再度行い、治療を継続するかどうか決めます。治療終了まで計6週間、30回を上限として行います。

実際の治療は、抗うつ剤を全て外して治療するのではなく、やはり抗うつ剤を併用して行うことが多いと思われます。理由は二つあります。臨床試験上は、rTMSの寛解率は、薬物治療を併用したほうが高いのです。また、rTMS治療終了後、良い状態を維持し、再発率を低くするために、最小限の薬物治療は必要と思われます。30回終了後も、メインテナンス目的での治療が継続できればよいのですが、30回以上は保険上できないということが最大の理由です。薬剤を完全に外したいという方は、主治医と相談の上決定します。

外来か入院か

外来通院で治療されている方もおられます。週に5回通院されることは、日常生活上支障が生じますが、御家族の協力が得られる方や、比較的お時間が取れる方は外来でもよいでしょう。
当院では入院治療をおすすめしています。毎日病院に通院する必要がありません。入院することで、こまめに薬剤整理を行い(用いる薬剤が少ないほうが、rTMSの治療効果が得られやすい)、きめ細かい治療が可能だからです。また、週末に外泊していただき、自宅内でできることなどを確認し、治療効果を実感しやすいということもあります。rTMSでの入院期間はおおむね6~8週間程度です。

副作用について

抗うつ剤内服時に生じる、眠気や口喝や倦怠感や性機能障害などはありません。
刺激している間に、刺激部位の痛み(頭痛)が生じますが、治療終了後は速やかに回復します。痛みで治療を脱落した患者さんはいまだおられません。
重大な副作用として、治療を1回受ける上で、けいれんが生じる方が0.003%程度おられます。事前に薬剤の調整などでこの数字はもっと下げられると思っています。当院ではまだけいれんが生じ、治療中断した方はいません。

費用に関して

rTMSが自由診療であった時代は、高価な治療でした。
rTMS1回で12000円×3割=3600円かかります(保険診療ですから、これは全国共通です)。自立支援制度を利用されている方であれば1割負担ですから、1200円になります。また、自立支援制度は収入に応じて月額の支払額の上限が5000円とか10000円などに設定されていますから、計30回治療を行っても、自己負担そのものは、随分安価になったと感じています。
医療費の乱費は良くないですが、経済的に治療をあきらめていた方にも治療の選択肢が広がったことはとても良いことだと思っています。精神科医療を受けておられる方は、仕事も長期的に休まれている方も多く、経済的に困窮されている方は少なくないと思います。

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2020年8月14日の治療状況について

 熱い日が続きますが、皆様お元気にお過ごしでしょうか?
 現在も病院は、おぼん休み中ですが、rTMSの治療は行っております。
 
2019年11月~2020年8月現在で、22名の方がrTMSの治療を受けました。
治療半ばで、rTMSが中止となった方は2名おられます。1名の方は、15回終了時にうつ病評価尺度にて改善を認めなかったために、保険診療の治療指針に従い、中止となりました。もう1名の方は、7回目終了時に御本人より「治療を終了したい」という申し出があり、終了となりました。その方は、遠方からお越しになり、当院に入院され、環境の変化もあり、不安感が募られた様でした。
 それ以外の20名の方は、最後まで治療を終結しております。15回終了時に、うつ病評価尺度(HAM-D)にて、うつ病の状態を再評価するのですが、20名の方は改善を認めており、治療を継続しております。皆さん、治療中に、頭痛以外の有害な副作用は認めておりません。

 症例を2例程提示したいと思います。
 


40代女性。両親、夫、お子さん4人の計8人家族。  


20代後半頃より、毎年2月初旬~4月中旬にかけて、意欲低下や倦怠感が生じるようになった。それ以外の時期は、何とか生活を送ることはできていたが、毎年2月~4月にかけては、強い倦怠感から、家事や育児や仕事などが行えなくなり、終日横になって過ごすようになった。 平成22年当院初診。抗うつ剤や抗不安薬や眠剤などが処方され、定期的な通院を行っていた。抗うつ剤を主体とした薬物治療の効果もあり、2月~4月にかけては、「仕事には行けないが、洗濯と買い物程度はできる」状態となった。しかし、それでも子供の行事や、それ以外の家事は、母親に任せ、横になって過ごしていた。

以上の様な病歴の方です。

この方は、毎年決まった時期になると、意欲低下や倦怠感などの抑うつ症状を強め、仕事、家事、育児が全く行えなくなるという方でした。テレビでrTMSのことを知り、2020年1月に御本人より希望があり、rTMSを行うこととなりました。1月中旬頃のことです。
2月が近づきつつあり、すでに調子が悪くなりかけていました。自宅から当院までは車で15分程度の距離ということもあり、通院にて行うこととなりました。



治療開始前HAM-D:20点(重症に相当)
週5回rTMSを行いました。刺激強度が低く設定できたこともあり、頭痛などの有害な副作用は生じることなく治療を継続できました。8回目終了時には「2月に入ったけど、今までと全然違う。仕事に行けているし、家事も普通にできている」と言われていました。



15回終了時のHAM-D::10点(軽症に相当)
「運動は続けています。体重も5kg落ちました。友人達と遊びに行くこともできるようになりました。また運転免許が欲しいと考えるようになりました」と言われ、運動をされているためか、体は浅黒く日焼けし、健康的にうつりました。



30回終了時のHAM-D:1点(正常域)
有害な副作用は治療中生じることは無く、30回の治療を終了しました。治療が終了した時は3月の半ばでしたが、治療開始から3月半ばまで、仕事は休まれることなく行っておられました。


40代後半の男性。  


40代前半頃より、仕事に行く前の不安感や抑うつ気分などが生じるようになった。次第にその不安感を紛らせるために、飲酒量が増大。飲酒を行っている間は、不安感も消えるが、飲酒を行わないと不安感が強く、さらに飲酒量が増えていった。深夜帯にアルコールが無くなり、飲酒状況下で車を運転し、酒を購入することを繰り返した。しかし、ある日飲酒運転が発覚し、運転免許証は取り消し処分となり、仕事も退職した。その後はアルコール摂取量は減ったものの、抑うつ気分を強めるようになり、さらには離婚も重なり、終日家にこもって過ごすようになった。いくつかの病院で入院、外来治療を受けるも効果は乏しく、令和2年1月に当院初診となった。
 
以上の様な病歴の方です。

この方は、当院受診時は、断酒はできており、アルコールの問題は認めませんでした。しかしながら、不安感と意欲低下が強く、外出がかろうじてできる程度でした。仕事もしたいという気持ちはありましたが、「頭と体がついていかない」という状態でした。当院受診後、通院加療は続けましたが、治療状況は一進一退の状況でした。薬剤を変更するも効果に乏しく、私からの提案で、rTMSを行うこととなりました。



治療開始前HAM-D:22点(重症に相当)
週5回rTMSを行いました。治療中軽度の頭痛がありましたが、施行を重ねるにしたがい、頭痛は消失しました。10回終了頃より、「体が軽くなった感じがする」と言われ、その頃より屋外での運動をされるようになりました。



15回終了時のHAM-D::10点(軽症に相当)
「運動は続けています。体重も5kg落ちました。友人達と遊びに行くこともできるようになりました。また運転免許が欲しいと考えるようになりました」と言われ、運動をされているためか、体は浅黒く日焼けし、健康的にうつりました。



30回終了時のHAM-D:7点(正常域に相当)
「この治療をやってよかったと思います。自動車学校に行って、運転免許を取ろうと思っています。免許が取れれば、仕事の選択肢も増えると思うので」と言われていました。現在は、無事、運転免許を取得し、再就職されています。仕事を辞めて、5年以上経過しており、疲れやすさなどはある様ですが、元気にされておられます。

以上、症例を2例提示しました。お二人とも外来通院で、治療を受けましたが、最近は県外の方で治療を希望されることが増えています。その際は入院治療をお勧めしています。隣県程度の距離であれば、15回終了時まで入院され、その後30回までは自宅から当院まで通って治療を受ける、というケースも増えてきています。

現時点での私の感想ですが、薬物治療と比べて、効果の出る出ないがはっきりとし、そして効果発現が10回以内に生じることが多いように思われます。有害な副作用が少なく、抗うつ剤で生じやすい眠気や嘔気などが無いという点も大きいです。